石から生まれる、白。
白磁の花器のはなし

土からつくる陶器に対して、磁器は石からつくられます。
陶石という石を砕いて粘土にし、1300℃前後の高い温度で焼き締める。そうして生まれるのが、硬く、白く、澄んだ肌です。

有田・泉山で採れた陶石。この白い石が、磁器のはじまり 写真:Pekachu/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0・トリミング)
かつての有田では、川の水で動く「唐臼(からうす)」が、この石を搗いて砕いていました。

有田の唐臼。水の力で杵を上下させ、陶石を搗いて砕いた 写真:Pekachu/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
白さの秘密は、鉄を引くこと。
原料の鉄分を取り除くほど白くなり、わずかに残ると、焼き方によって青みや象牙色を帯びます。
白磁の肌にときどき見える小さな黒い点は「鉄粉」。
取り除ききれなかった鉄の名残で、天然の石から生まれた印です。
日本で磁器がつくられるようになったのは、江戸時代のはじめ。
朝鮮半島から渡ってきた陶工・李参平が、佐賀の有田で白い石を見つけたことから始まったと伝えられています。

有田・泉山磁石場。白い器の原料となる石が掘り出された山 写真:STA3816/Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)
泉山はいまではほとんど掘られておらず、有田焼の主な原料は、熊本・天草で採れる「天草陶石」に移っています。
有田の器は、近くの伊万里の港から各地へ運ばれたため、「伊万里」の名で呼ばれるようになりました。

川原慶賀が描いた長崎湾と出島(1836年頃)。手前の扇形の島が出島 Museum Volkenkunde所蔵/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
17世紀には、長崎の出島からオランダの船で海を渡り、ヨーロッパの宮殿を飾ります。
東洋の白い器への憧れは大きく、18世紀のはじめ、ドイツのマイセンでヨーロッパ初の本格的な磁器が焼かれました。
英語で磁器を「china」と呼ぶのは、磁器が中国から伝わったものだから。
ちなみに漆器は「japan」。器の名前に、国の名が残っています。
朝鮮の白磁の大壺「月壺」は、当時はただ「大きな壺」と呼ばれる日々の器でした。
二つの半球をつないで焼くため、形は少しずつゆがみ、白の色合いもひとつずつ違います。
完璧ではない白が、いまは何より美しいとされています。
KTGSの白磁も、艶を抑えたやわらかな白。花を生けると、枝の線や花の色が静かに引き立ちます。


手もとの器が陶器か磁器か。暮らしの中で確かめられる、簡単な目安があります。
光にかざす
磁器は、薄いところがほのかに透けて見えます。陶器はほとんど透けません。
指ではじく
磁器は「キン」と高く澄んだ音。陶器は「コン」とやわらかな音がします。
底を見る
釉薬のかかっていない底の輪(高台)が、磁器は白くなめらか。陶器は土の色やざらつきが見えます。
KTGSでいえば、白磁が磁器、「白壁」の一輪挿しが陶器。
同じ白でも、並べてみると肌の表情がまったく違います。

土の質感を生かした「白壁」の一輪挿し(陶器)
磁器は、水をほとんど吸わない
花を生けたあとも洗いやすく、乾きも早い。手入れが楽な器です。
陶器は、水を吸いやすい
使ったあとは、内側までしっかり乾かしてからしまうと、においやカビを防げます。
花の水は、こまめに替える
水を替えるときに器の内側もさっと洗うと、花が長持ちします。

石を砕き、高い熱をくぐって生まれた白。
これからの季節は、紅葉した枝や、実のついた枝ものを。
白い器は、季節の色をいちばん素直に映してくれます。
花を替えるたびに、同じ器が違う景色を見せてくれるはずです。

